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氷解のドラマ

ウチの親父は姉と弟の3兄弟だったが、30年ほど前から縁を切っていた。
いろいろなことを端折ってものすごく簡単に言うと、代々の土地である実家の相続で揉めたからだ。

昨日実家で親父の介護をしている弟に祖父母の入るお寺から納骨管理の件で電話があった。
親父は高齢で細かい手続きや判断が利かないこともあり、弟がお寺とのやり取りを進める上で、長く音信不通だった親父の姉弟に相談をする必要があった。
姉(我々からすると叔母に当たる)は、10年ほど前にすでに他界しているので弟(我々からすると叔父に当たる)に電話を入れた。
叔父と弟は長い不通の年月を遡りながらお互いを労い、懐かしんだ。

叔父は兄である我々の親父から自分のことを悪く伝えられているだろうと思い、我々にも連絡することができなかったと言った。
確かに弁護士を立てて争うほど叔母や叔父と敵対していたし、彼らのことを激しく罵るようなこともあったかも知れない。

叔父との会話の途中、弟が

「親父さんはもうだいぶボケてるからね、昔の土地がどうだったとか、裁判がどうとかって話を全然覚えていないって言うんだよ」

と叔父に伝え、親父と電話を代わった。受話器の向こうで身構えて息を飲んでいる叔父の鼓動が伝わるようだ。

電話を代わった親父が

「◯◯かい? ほんとに申し訳ないねぇ。私も90になっていろんなことがちゃんとできなくてねぇ・・。ほんとにすみませんねぇ」

と言うと、叔父が

「いや、申し訳ないなんて言わないで。何も申し訳ないことなんかないんだから、△△ちゃん」

と泣きそうな声で言った。
何か全てが氷解していく瞬間で、オイラも胸が熱くなった。

長い年月という時間なのか、それとも認知症状なのか、それは自分にはよくわからなかったが、人の心や愛憎というのは変わるものなのだな。

オイラは小学生から中学生になる頃、この叔父からビートルズを教わった。
今日は久しぶりにビートルズを聴いてみようか。

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