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ビールグラス

何年か前にベルギー旅行をした時に昼も夜もいろいろなビールを飲んだ。

ビール好きのカミさんにはたまらない忘れられない旅で、ベルギーは絶対にまた行くと目を輝かせている。

その道中で飲んだビールをブリュッセル空港の免税店でグラスとセットでいくつかバンコクに持ち帰った。

その中でも特にカミさんが気に入っているグラスが、

「ロシュフォールトラピストエールビアグラス」

自宅でビールを飲む時には必ずこのグラスを使う。

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そしてその大切にしていたグラスを先日落として割ってしまった。

今まで普通に扱えたものをだんだん落として壊すようになってきた老いへの情けなさも重なってとても落ち込んだ。

またベルギーで買えばいいと慰めたところでこのコロナではいったいいつヨーロッパ旅行なんかできるのかわからない。

そこで、タイのオンラインモールLazada(ラザダ)を調べてみると、なんとこのグラスを売っていた。

「中国からの配送になります」

と書いてある。

中国かぁ・・と思ったが何万円もするものでもないし、こんなグラス一つがきちんと届くのかどうかの実験も合わせてポチってみた。

毎朝カミさんは

「ねぇ、今グラスはどこ?」

と訊くのでLazadaのトラッキングを調べる。

今、中国国内の集配所、今、中国の税関、航空便待ち、今、タイに到着・・・

と移動の詳細はきちんと閲覧でき、どこにあるのかは把握できる。

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そして今日、オイラの電話に

「Lazadaのデリバリーですがあと10分で着くよ」

と連絡があった。

コンドの集配デスクでそれを受け取ると、部屋に戻り開梱してみる。

グラス1個をたくさんのプチプチで包んである。

何枚も何枚も剥いてようやく出てきたグラスはどこにも傷がなく見事に手元に届いた。

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ブリッジから戻ってきたカミさんがテーブルの上の小さなダンボールを見つけて

「届いたの?」

と興奮した声を上げた。

オイラはキッチンの棚の中に置いたと告げる。

カミさんは小走りでキッチンに行き、棚を開けて歓声を上げた。

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そしてしばらくしてグラスを持ってオイラのところに来ると

「ねぇ、なんか軽い。持った感触が違う」

と手に持ったグラスに懐疑の眼差しを向けた。

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