Jalan Jalan

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愛にほど遠い。

一人で居酒屋で夕食をとっていた。
通りに面したカウンター席だったので、窓から歩く人々が見える。
その向こうにギターの弾き語りをしている40歳くらいの男性がいた。

「Please support blind singer」

という厚紙が立ててあった。
薄い生地のギターカバーの上にはまだお金が置かれていなかった。
何曲か弾き語った後で、彼はペットボトルの水を飲んだ。
ひと休みしている時の顔が少し辛そうに歪み、その顔がオイラ自身の辛かった時の記憶とダブった。

普段はそんなことしないんだけど、店を出てから彼のギターケースの中にお金を置こうとした。
彼は何も気づかず前を見ていた。
盲目なんだから、当たり前だ。

なのに、オイラはちょっと気づいて欲しくてモタモタとお金を置いた。
でも、彼は気づかなかった。

バイクに跨って自宅まで走る帰路、金を置いたことを彼に気づいて欲しかった自分に嫌悪した。

ダサ。

こんなに歳を重ねているのに、あんな小さなお金でも何かしらの見返りを求めた自分がさもしく思えた。

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