2026年、明けましておめでとう! シラクーザはまだ夕方4時。これから栗田家が部屋にやってきて、今日市場で仕入れた新鮮な食材を料理して年越しパーティーをやろうって話。 昼飯は抜いたし、キャベ2も飲んだし、今宵の暴飲暴食の準備は整えて彼らを待っている。 昨年はいろいろあったけど、オイラ的には最高にいい年でした。今年もみんなにとって最高の年になりますように!
Month: December 2025
ラグーザからシラクーザに向かう途中でノートというこれも世界遺産の町に寄る。美しい町並みを歩きながら歴史的価値のある教会や大聖堂を巡る。 シチリア島のいろいろな教会や聖堂を見ながらどれもそれぞれ個性があって美しいと感じたが、日本の寺まわりも同じなんだなと思った。 そして、地元の人々にとっては信仰や生活に欠かせない場所。今日初めて懺悔をしている人を見た。 本当に素敵なノートを後にして、シラクーザへ。シラクーザでは4泊し、観光をせずにゆっくりと暮らすように地元の人々の生活をなぞってみたい。 シチリアで最も美しい古代地中海の町と言われるシラクーザは新鮮な魚介類が豊富らしい。明朝は島の市場へ行って魚や食材を仕入れ、部屋のキッチンで料理する予定。
スキアーヴィ城を後にすると、「バロック様式の町」として、町全体がユネスコの世界遺産に登録されているラグーザに。宿のそばにあるサンタ マリア デッレ スカレ教会から望む美しい旧市街。 迷路のように入り組んだこの町を歩き回るのは楽しい。今日は、チョコレートでも有名な歴史の町、モディカやシクリ、マリーナ・ディ・ラグーザなどを回る。モディカではGoogle Mapが「目的地までにどうしても通れ」と強要する細道の地獄にハマった。 ヨーロッパのように歴史のある町々は、そもそも車なんてものがない時代に造られているわけだし、世界遺産であればそう簡単に「この家壊して道を広げよう」なんてことはできないので、地元の人々の車は極端に小型だし、運転技術も適応させるしかない。旅行者がこんな図体のでかい車で乗り入れるのが間違っているんだな。 モディカを後にして、シクリ、マリーナ・ディ・ラグーザなど、同じように歴史のある町を回りながら両脇から迫り来る石の家々、細い石畳の道に延々と続く地元民の路上駐車の列に苦労した。 それでもその日帰り旅行からラグーザに宿に戻ってくると、時刻はちょうどマジックアワー。 家々がギュウっと詰まった旧市街が浮かび上がって、とても美しかった。
以前申し込んだゴッドファーザーロケ地巡りツアーがキャンセルになったのは、パート1、2、3全てに登場する最も重要な舞台「スキアーヴィ城」が閉まっているからという理由だった。また、この城はイタリア貴族の男爵が所有していて、特別な契約を交わしたツアー業者とそのツアー客しか入城できない。ということで前回の自力ロケ地巡りでは断念した。 映画の重要な舞台、スキアーヴィ城 2泊したタオルミーナから今日向かう次の目的地ラグーザへの道がスキアーヴィ城の近くを通ることに思い当たり、途中寄ってみることにした。閉まっていたら仕方がないけど、もし開いていれば入城は叶わなくても門の外からその姿を拝むことができるかも知れないと期待したからだ。 スキアーヴィ城に着いたのが朝9時30分。鉄の門扉は固く閉められ、その外観を伺うことすらできなかった。でも、もしかしたら10時に門が開くかも知れない(笑)。未練がましいのだ。もしかしたらのひょっとしてに期待して、近くのカフェで朝飯を食べながらちょっと待つことにした。 10時10分くらいに再び訪れてみると、駐車場と思しき鉄扉が開いていた。 「あ!なんか開いてる!」 とそこに車を滑り込ませる。 そこが駐車場なのかどうかわからないが、そこにひとりの老人がいて、いきなり入ってきた我々に 「おいおい、なんだあなたたちは」 という顔をして近づいてきた。 「ここは、一般の人は入れないよ」 オイラは、これだけ覚えていたトトの時のイタリア語決めフレーズ 「私たちは、スキアーヴィ城を見に日本からやってきました」 を叫んだ。 老人は車窓からこちらを覗き込みながらもその言葉に少し驚いて、そして少し警戒を解いたようだった。 「じゃあ、降りておいで」 この老人は誰なのだろう? 駐車場の管理人? それともまさか姿を現すことはないと言われる貴族の男爵じゃないだろうか? その時の動画がこれだ。途中でカミさんが「あなたは男爵ですか?」と翻訳アプリで訊いている(笑)。 そして、まさかの男爵様だったのだ。 彼は、我々を城内まで引き入れ、なんと男爵自ら場内の全てを解説しながら案内してくれたのだ。 そして、自室内の資料も一つ一つ丁寧に説明してくれた。 もちろんこの由緒ある城の歴史からゴッドファーザーの撮影話、アル・パチーノ、ロバート・デニーロ、フランシス・コッポラ監督たちとの思い出まで。我々はもう「わー」とか「えー」とか「ひー」とか歓声を上げるばかり、舞い上がるばかり。 スキアーヴィ城の外観 映画と現在のスキアーヴィ城の門 バルコニーのマイケルとオイラ マイケルを裏切って新婚の花嫁を爆死させた用心棒とオイラ(体の向きw) この用心棒の裏切りで車が爆発したシーンと現在の場所 パート3の最後、マイケルが亡くなるシーンで使われた椅子はそのまま残っていた。 城の庭に降りてきたマイケルとオイラ。 ・・・なんてことに貴族の男爵様はずーっと付き合ってくれた。幻の男爵に遭遇し、城の案内や説明までしてもらい、様々な撮影シーンの一コマに想いを馳せながら感激の時間を過ごした。 ありがとう、男爵。
昨日のメインイベントはランチ。バンコク在住の栗田家とこのレストランで会うという壮大なプラン。我々がシチリア旅程の丸1日を使って、車で往復300km走って、わざわざランチを食べに行こうと思い立ったきっかけはこのイタリアン料理小倉シェフの1本の動画だった。 調べてみると、他にもこの店を訪れた人々が皆口を揃えて「間違いなく自分の人生最高のレストラン」と言っているのを見て、「人生最高のレストラン」とはどんなものだろう、どんな味だろうと言う気持ちが抑えられなくなった。 タオルミーナの宿からシチリア島の北東の岬の町メッシーナはイタリア本土の「ブーツのつま先」がもう泳いで渡れそうな近さに見ることができる。ハイウェイから山道に入り、レストランのある山の入口に向かう。栗田家とは過去スペインでもバッタリ遭遇するなど、遭遇タイミングが神がかっているので今回も「山の登り口でバッタリ遭遇したりしてね」と言っていたら バッタリ遭遇した。 この「Ristorante Fattoria Borrello」というレストランは食材を自分たちで飼育、栽培しているのでそもそもその環境が違う。 小倉シェフの動画にも出てくるアンナさんが直々に今日のお勧めメニューを決めてくれ、それに小倉シェフお勧めのワインをペアリング。 野菜も採れたて、チーズも今朝作ったもの、肉は自家飼育の黒豚や牛。どれも皆今まで食べたこともないほど美味しくて、確かに誰もが「人生最高のレストラン」と称賛するだけあるんだなと思った。 この黒豚のスペアリブなんかとろけるよう。 最後にアンナさんと。 15時間かけて、さらにそこから300km走ってでもまた行きたいと思える素晴らしいレストランだった。
翌朝カターニアの宿で起きると、できるだけ早くこの魔界から脱出しなければという思いと共に荷物整理をして車に乗り込んだ。 今日は、この旅のきっかけとなったゴッドファーザーロケ地巡りだ。予約していたツアーは向こうからキャンセルになったので、「自力」で場所を探しながら巡ることになった。まず向かったのは、マイケルの父親、ドン・コルレオーネの故郷でもあるコルレオーネ村のロケ地、サヴォカ。 この景色を探し出した。 ここはマイケルがアポローニアと結婚式を挙げた教会から、アポローニアの父親が経営するBar Vitteliに向かう道中だった。そのBar Vitteliは、なんと現存する。 マイケルとその用心棒たちが休憩しに入り、村で見かけた女性の話をすると、この店のオーナーがその父親だった。 現存するBar Vitteli。今もその面影を残すカフェになっている。 ここでマイケルはアポローニアの父親に「彼女と結婚したい」といきなり告げる。 そして、オイラもマイケルの席に座る。 そして中でカンノーロとどろどろのホットチョコレートを飲んだ。ゴッドファーザー撮影時の写真や小道具が飾られていた。 ここからまた数カ所、ロケ地を巡り、同じような写真を撮りながらタオルミーナに向かった。
今日は、何もかもが素晴らしかったカステロブオーノを後にして、シチリア第2の都市、カターニアに向かった。この地で夜着のフライトで日本からやってくる義姉と合流する。ひと足さきにカターニアの宿にチェックインしようと車を飛ばしてきたが、アパートの住人から 「ここは宿じゃない」 と言われ、オーナーを探していたら、胡散臭そうなイタリヤ男が 「ここは1年前に住居になってる。予約なんか受けてないし、Agodaなんか知らない」 とけんもほろろ。いやいやいやいや、予約確認書も届いているし、クレジットカード決済も終わっている。 「そんなこと言われても知らない」 じゃあ、とスタスタとどこかへ行ってしまった。カターニアでいきなり家なき子になってしまった。すぐにAgodaのカスタマーサービスに苦情を送信し、代わりの宿をBooking.comで探す。当日に駐車場有の物件を探すのはほんとに苦労したが、なんとか確保。日本からやってきた義姉を車中泊でお迎えしなくて済んだ。 Agodaは、苦情をもとにすぐに事態を確認したらしく「申し訳ありません、返金します」と返ってきたが、亡くなった宿は戻ってこない。 「どうしてこんなことが起こったのか理由を説明して欲しい」 と返したら、 「契約している代理店の確認不足でした。申し訳ありません。今後は宿にも直接連絡して確認することをお勧めします」 それ、お前じゃなくて、オイラがやるんか、おい。じゃあ、予約サイト使う意味ねーぞ。ダメだな、Agoda。 しかし、悲劇はここで終わらなかった。 車で確保した宿に向かう途中、地元のマフィアというかチンピラに絡まれて車内にあった貴重品バッグとスマホを奪われてしまった。 すぐに追いかけ、返せ、返せ、と揉み合っていたら、他のチンピラも5、6人オイラを取り囲むように威嚇してきたので、 「こりゃ、本格的にヤバいことになっちまったな」 とぐったりした気持ちになった。揉み合いや罵声の中で、それでもオイラはバッグとスマホを死に物狂いで奪い返した。その間、車は車道のど真ん中にあり、他の車の通行もできず、路上は騒然としていたが、奪い返したものを抱えて車まで走って逃げ込むと、すぐにアクセルを踏んで走り出した。トム・クルーズ必死の逃走だ。 なんなんだ、カターニア。なんなんだ、カターニア人。オイラもカミさんもすっかりカターニアが大嫌いになった。気持ちはこのまますぐに次の目的地タオルミーナまで行きたかったが、義姉は夜カターニアにやってくるのでここを離れてしまうわけにはいかない。 とりあえず確保したアパートにチェックイン。ちょっと落ち着いたら朝カステロブオーノでリコッタチーズクリームのドーナツを食べて以来何も腹に入れてないこともあり無性に腹が減ってきた。遅いランチをしようかと車で街中を走ったが、クリスマス当日は全く店が開いていない。 なんてクリスマスだ! 我慢して帰路に着いたところで、道端のサンドイッチ屋が1軒営業しているのが目に入り、すぐに停めて買うことにした。 もうなんだか、どうでもいい、なんでもありだ!という気持ちを代弁するようなサンドイッチがメニューの中にあったので、オイラは即決した。 「ドナルド・トランプバーガー」 そう、もう、なんでもあり。
「ニューシネマパラダイス」は我々が人生で最も愛する映画のひとつである。この映画は監督のジュゼッペ・トルナトーレ自身の生い立ちの実話を映画化したもので、トトと映写技師のアルフレードとの心温まる交流、切ない郷愁の想いが胸を打つ。 そして、そのトトが本当に愛しく、かわいいのだ。 トトとアルフレード 映画を観ながら大喜びのトト このトトは元々子役ではなく、この映画のロケ地「パラッツオ・アドリアーノ」にたまたま住んでいた少年で、この映画の主役の子役として抜擢された。つまり地元の男の子だった。オイラはトトの父親がレストラン併設のB&Bを経営していることを突き止め、パラッツオ・アドリアーノにほど近いこのB&Bも訪問してみたいと思った。とはいえ、Googleで調べてみると、最後のレビューは12年前になっている。もうこのB&B自体閉館してそこには何もない可能性が高かったが、それでもその場所に何かしらトトの残り香がないか、そんな思いを抑えられず、クネクネした山道を登って行った。 果たして、そのB&Bはあった。しかし、中には人の気配もなく、窓から中を覗いても散らかったテーブルと椅子が昔レストランだった気配を残しているだけだった。 建物の周りを2人でぐるぐるして、どこかに何か手がかりはないかと探したが、猫が2匹こちらを伺っているだけで何もなかった。 「だよね」 とカミさんと納得して、車に乗り込み、建物の敷地を出かかったところで、小さく声が聞こえた。車を止めて、ウィンドウから見上げてみると、建物の2階の窓から中年の女性が何か叫んでいる。無断で敷地内でウロウロしていたことを咎められたんだろうか。何か言い訳をしないと、と思い、Google翻訳で 「日本からトトに会いにやってきました」 をイタリア語に翻訳し、それを読みながら大声で何度も叫んだ。 女性はイタリア語で何か叫んでいるがまるでわからない。なんとなく、そこにいろと言われているようだったので、車のそばで女性が降りくるのを待っていた。 女性は最初ずっとイタリア語で喋り続けていたが、我々がまるで解してないことに気づくと、自分もアプリ翻訳したスマホを見せてきた。 「私はトトの義妹です」 「えーーー!」 オイラとカミさんは顔を見合わせて叫んだ。なんとトトの親族だ。 「散らかってるけど、中に入って」 と引き入れられたレストラン跡には「ニューシネマパラダイス」の写真やオフショット、新聞の記事がたくさん貼られていた。 彼女のそばには、人懐っこくこちらに何か言ってくる女の子と、どこかで確かに見たことがあるような男の子。 「この子たちは、トトの孫です」 「えーーー!」 見たことあると思ったのは、この男の子がトトそっくりだったからだ。 今、我々は、あの愛してやまないニューシネマパラダイスの、あのトトの実家で、あのトトの家族とお話ししている、と思うと感激でそのまま召されそうだった。 そう思っていたら、義妹がスマホでどこかに電話をかけ、二言三言話すと 「トトよ」 とスマホをこちらに向けてきた。 オイラはまるで夢心地で自分で何を話しているのかわからなかったが、オイラとカミさんはあの憧れのトト本人としばらく話をした。全部は載せられないので、最後の挨拶だけ。 オイラは感動のあまり、涙がボロボロ落ちてきてそこで号泣してしまった。カミさんも泣いている。 と、思ったら義妹ももらい泣きしていた(笑)。 それは、クリスマスイヴの奇跡だった。
パレルモ2日目は次の山場、マッシモ劇場。ゴッドファーザー3のラストでマイケル(アル・パチーノ)の息子アンソニー主演のオペラを観劇した後、劇場の表階段で娘メアリーが殺し屋に射殺され、マイケルの慟哭が響く悲しいシーンでも有名。 ゴッドファーザーへの思いが天に通じたのか、ちょうどこの日にポツンと人気オペラ「ラ・ボエーム」が上演されると知り、チケット販売時間前から待機して、ポチポチしていたら第一希望の席を予約できた。この白矢印の2席。中央のマイケル家族がいるボックスシートの隣、手を伸ばせばマイケルに届きそうな席だ。 映画でもちょうどハゲと女性が座っている。 後のドンとなるビンセント(アンディ・ガルシア)が部下の双子と警備に当たっていた劇場の模型の横のシーン。 ここに立つカミさん。 劇場内は豪華絢爛でありながら歴史の重みを感じさせる。 オペラは悲しく、そして美しく。第2幕は舞台一杯のキャストが賑やかだ。 生まれて初めてのオペラをゴッドファーザーのマッシモ劇場で体験し、外に出るとパレルモの夜はだいぶ冷え込んでいた。 そして、マイケルの慟哭の場所でオイラも慟哭した。 レッドカーペットがクリスマスのためにポインセチアになっていた。メリークリスマス。
