「ニューシネマパラダイス」は我々が人生で最も愛する映画のひとつである。
この映画は監督のジュゼッペ・トルナトーレ自身の生い立ちの実話を映画化したもので、トトと映写技師のアルフレードとの心温まる交流、切ない郷愁の想いが胸を打つ。
そして、そのトトが本当に愛しく、かわいいのだ。

トトとアルフレード

映画を観ながら大喜びのトト
このトトは元々子役ではなく、この映画のロケ地「パラッツオ・アドリアーノ」にたまたま住んでいた少年で、この映画の主役の子役として抜擢された。つまり地元の男の子だった。
オイラはトトの父親がレストラン併設のB&Bを経営していることを突き止め、パラッツオ・アドリアーノにほど近いこのB&Bも訪問してみたいと思った。
とはいえ、Googleで調べてみると、最後のレビューは12年前になっている。
もうこのB&B自体閉館してそこには何もない可能性が高かったが、それでもその場所に何かしらトトの残り香がないか、そんな思いを抑えられず、クネクネした山道を登って行った。
果たして、そのB&Bはあった。しかし、中には人の気配もなく、窓から中を覗いても散らかったテーブルと椅子が昔レストランだった気配を残しているだけだった。
建物の周りを2人でぐるぐるして、どこかに何か手がかりはないかと探したが、猫が2匹こちらを伺っているだけで何もなかった。
「だよね」
とカミさんと納得して、車に乗り込み、建物の敷地を出かかったところで、小さく声が聞こえた。
車を止めて、ウィンドウから見上げてみると、建物の2階の窓から中年の女性が何か叫んでいる。
無断で敷地内でウロウロしていたことを咎められたんだろうか。
何か言い訳をしないと、と思い、Google翻訳で
「日本からトトに会いにやってきました」
をイタリア語に翻訳し、それを読みながら大声で何度も叫んだ。
女性はイタリア語で何か叫んでいるがまるでわからない。
なんとなく、そこにいろと言われているようだったので、車のそばで女性が降りくるのを待っていた。
女性は最初ずっとイタリア語で喋り続けていたが、我々がまるで解してないことに気づくと、自分もアプリ翻訳したスマホを見せてきた。
「私はトトの義妹です」
「えーーー!」
オイラとカミさんは顔を見合わせて叫んだ。なんとトトの親族だ。
「散らかってるけど、中に入って」
と引き入れられたレストラン跡には「ニューシネマパラダイス」の写真やオフショット、新聞の記事がたくさん貼られていた。

彼女のそばには、人懐っこくこちらに何か言ってくる女の子と、どこかで確かに見たことがあるような男の子。
「この子たちは、トトの孫です」
「えーーー!」
見たことあると思ったのは、この男の子がトトそっくりだったからだ。

今、我々は、あの愛してやまないニューシネマパラダイスの、あのトトの実家で、あのトトの家族とお話ししている、と思うと感激でそのまま召されそうだった。
そう思っていたら、義妹がスマホでどこかに電話をかけ、二言三言話すと
「トトよ」
とスマホをこちらに向けてきた。
オイラはまるで夢心地で自分で何を話しているのかわからなかったが、オイラとカミさんはあの憧れのトト本人としばらく話をした。
全部は載せられないので、最後の挨拶だけ。
オイラは感動のあまり、涙がボロボロ落ちてきてそこで号泣してしまった。カミさんも泣いている。
と、思ったら義姉ももらい泣きしていた(笑)。
それは、クリスマスイヴの奇跡だった。
