晩餐会
Name: 朝田 光 (2004年3月2日)
Date: 04年3月02日 13時11分10秒
理由があってハノイにある日本大使館の大使主催「晩餐会」に行くことになった。ハノイ大使の公邸はハノイ大使館の敷地内にあり、かなりの豪邸。しかも中庭は100坪を越える芝生があり、その横には日本庭園まで配置されている。以前サイゴンにある総領事公邸で晩餐会に参加したことがあったが、ハノイの大使公邸の方が数十倍ゴージャスな感じがした。まず公邸の入り口を入ると大きな玄関ホールがあり左側にクローゼットルームがある。玄関ホールを前に進むと左手にそれこそ100敷きほどの大きな応接ルームがあり、そこでまずは懇談。その後玄関ホールを渡り右手のダイニングルームで食事となった。
食事はフレンチでサイゴン総領事公邸晩餐会の時のような、日本料理と西洋料理がアレンジされているようなものではなくまっとうなフランス料理でもあった。大使や総領事の場合、大使館付きの料理長はほとんど日本人で、さらにその料理長を自ら見つけ出して帯同させなくてはいけないので、外国に赴任する時は料理長を探し出すだけで大変な労力がいるとのこと。ただ今頃は料理長として働ける人材がもうリスト化されているので、わがままさえ言わなければ簡単に見つかるようになっているらしい。しかし料理にうるさい人や、郷土料理を楽しみたい人など、いずれにしても自分で探すと言う努力はしなければならない。
ハノイの大使館料理長は六本木で修行した人らしく、見た目まだ若いピカピカのシェフである。盛り付けなど日本的な感覚を感じはしたが、それでもフランス料理。少し重い料理でもあった。

大使館の晩餐会の食事はもちろん日本外務省の出先と言うこともあり、全てに菊の御紋が入っている。たとえコースターにしろ、はてはメニューが書いてある紙にしろ、全てこの御紋が入っているので少しいかめしい気もする。さらに大使のお話にはベトナムトップとの交渉裏話など、日ごろの私のビジネスからかなりかけはなた話題も多かったので、どうも肩肘が張ってしまった。
その中で、ベトナムを表現したこんな話が私にとって一番面白かった。
「ある日アメリカ人がベトナム人と川海老を採りに行った。二人とも十分に取ることができたので、二人のバケツは川海老一杯になった。そこでアメリカ人はそのバケツに蓋をして川海老が逃げないようにしたが、ベトナム人は平気な顔をして蓋もせず気楽に持って返ろうとした。不思議に思ってアメリカ人は『そんなことをして川海老がバケツから逃げないのかい』と聞いた所、ベトナム人はニヤニヤと笑いながらこう答えた。
『だんな。ベトナムでは逃げられませんぜ。バケツの中で互いに足を引っ張り合いますから』」
以前ベトナムは嫉妬が多い国だと書いたことがあるが、この嫉妬確かに別の意味では「足の引っ張り合い」に通じるところがあるのかもしれない。
そんな話を聞きながら晩餐会は2時間近くに及んだが、9時前には大使館から帰る事にした。大使館の中の静けさから一歩外に出ると相変わらずオートバイが走り回っており、ベトナムらしい光景がそこには拡がる。大使館の中と外では大違いだ。
こういうことを言ってはお叱りを受けるかもしれないが、こんな公邸やら大使館やらで働いていると、どうも浮世には疎くなり庶民と直結した公務ができるのか心配してしまった。