ラオスの大金持ちPart2
Name: 朝田 光 (2003年10月27日)
Date: 03年10月27日 21時51分41秒
以前書いた「サイゴンの暗い夜」に数々のコメントを頂いた。改めて御礼を申し上げたい。真剣に心配してくれた尼姉、人づてに「朝田は大丈夫か」と確認いただいたAlisa様。ご心配をおかけしております。ただ、いつも前向きなJunさんからは下記のメールを頂いた。
「北方謙三や大沢在昌を凌ぐハードボイルドエッセイ!先生、この路線で、アジアハードボイルド小説もいけるんじゃないですかね?」
まあ親友というものはこういうものかもしれない。
さて今回は以前書いてちょっと評判になった例のラオスの大金持ちの話の続きである。
今回はオープニングセレモニーを終えてホテルで一休みと思ったところ、彼の自慢のファームへ招待したいということで、渋々彼の車に乗って行くことにした。彼のファームはビエンチャンから西方に40kmくらいのところにある。
ビエンチャンの市街地を抜けるとラオス独特の田園地帯が続く。ベトナムと違いラオスの主食はもち米なので稲のつき方もちょっと違う印象を受ける。しかしベトナムと同じく機械化という点では随分遅れていて、未だに牛による耕作や手作業で脱穀などしている姿が見られた。しかしこののどかな状況を楽しむ暇はない。とにかく猛スピードでこの大金持ち車を走らせているのだ。ただ私はそれにもかかわらず、眠ってしまった。途中あまりの運転の荒さに何回かたたき起こされたが、それでも眠り続けてしまった。多分今までの中で一番疲れていたのではないだろうか。こんなときに彼のファームなど見たくも無いのだが、これも仕事の一環断るわけにはいかなかった。

1時間半ほどで小さな町を抜けるとでこぼこ道となった。この道も、道沿いに立っている電柱電線も彼が自ら引いたそうでこの先の村は全て彼の従業員ということであった。でこぼこ道を20分も行くと大きな門がありここから彼のファームが始まる。大きさを聞いてみたが「この先50kmは俺の土地」という答えだけで実際どのくらい大きいのかわからない。まず門を抜けてびっくりさせられたのが「湖」が現れたことだ。池と呼ぶには大きすぎる。水深も15mほどあり周囲見渡した限り20kmくらいある。彼のファームは主に林業をしているから水は欠かせないものらしいが、それにしても立派な湖である。さらに彼は山の展望台に案内する。そこからはるか向こうに山並みが見えるが、彼曰く「ここから見える景色は全て俺の土地」と言うことだった。確かに馬鹿でかい。
景色で度肝を抜かされた後、ぐるっとファームを回ることにした。でこぼこ道をそろそろ行くと麦わらで出来たお粗末な家が見えてくる。その前に看板。なにやら数字が書いてある。彼の説明によるとこの粗末な家に何人住んでいてそのうち子供が何人、老人が何人と家の前に表示してあるそうだ。この表示にしたがって彼が月々コメを支給しているらしい。これを見て初めて「搾取」と言う言葉が頭をよぎった。彼のこのファームでの家はレンガ造りの立派なものである。しかしここで働くワーカーは今まで見た中で最も貧しい家であった。冬など寒くていてもたってもいられないだろう。そんな家である。「搾取」の次に浮かんだ言葉は「強制労働」である。どうもこれらワーカーが囚人に見えてきてしまった。私はこんな世界は好かん。
彼はこの後見せただけで「すごいだろう」と自慢し、さらにこのファームに来た要人の写真を自慢げに見せていた。その中にJICAの人もいて「貧困解消プログラムが発展することを願う」など言葉を寄せていたが、労働環境の改善が先ではないだろうか。
ラオスはベトナムと同じく社会主義のはず、どこでどう間違ってこんなことが許されているのだろうか。同行してベトナム人に聞いてみても「ベトナムではありえない。労働者が反乱を起こし湖の魚だとか木材だとか勝手に切り出して売ってしまうだろう」と言っていた。
だから世の中難しい。貧困解消プログラムと言ってもこの体たらく。しかしそれでも彼らに家があり、家族と一緒に暮らせる幸せがあると反論されれば当方としても答えようがない。
黒柳哲子がニコニコ笑いながら難民の周りで談笑しているポーズを見ていると、本質は何か、そして何をすべきかという基本的な問題にスタンドプレィは必要ないと思うのは私だけであろうか。